『秒速5センチメートル』のあらすじと感想・ネタバレあり
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「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。」

これは、アニメーション映画監督・新海誠氏が2007年に発表した作品『秒速5センチメートル』のキャッチコピーです。秒速5センチメートルは、”桜の花びらが舞い落ちる速度”のこと。

この作品は、主人公・遠野貴樹の視点を中心に、時間の流れと共に離れていく女性・明里との心の距離について3部構成で描かれています。

主題歌である山崎まさよし氏の「One more time, One more chance」は誰しも耳にしたことがある名曲ですよね。

本記事では、『秒速5センチメートル』について、見どころを押さえながら順を追って解説していきます。

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映画『秒速5センチメートル』の作品情報

公開日 2007年3月3日
原作 新海誠
監督 新海誠
脚本 新海誠
絵コンテ 新海誠
演出 新海誠
キャラクター原案 新海誠
キャラクターデザイン 新海誠
作画監督 西村貴世
美術監督 新海誠
美術背景 丹治匠、馬島亮子
色彩設計 新海誠
編集 新海誠
音響監督 新海誠
アフレコ演出 三ツ矢雄二
音楽 天門
主題歌 山崎まさよし
制作 新海誠、コミックス・ウェーブ・フィルム

 

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映画『秒速5センチメートル』のあらすじ

『秒速5センチメートル』は3つの短編映画です。

男女の切ない恋愛を全3話で描いています。各話のあらすじを紹介します。

第1話「桜花抄(おうかしょう)」あらすじ

第1話「桜花抄(おうかしょう)」あらすじ

東京の小学生であった遠野貴樹(とおのたかき)のクラスに、篠原明里(しのはらあかり)が転校生としてやってくる。ふたりは体が弱く、外で遊ぶことよりも図書室で読書に耽ることの方が好きだった。そんなふたりはお互い気が合い、自然と仲良くなっていった。

ときにはクラスメイトに、仲の良さをからかわれたりもしたが、お互いがいればそれだけで良かった。

卒業後も同じ中学に行く約束をしていたが、明里の栃木への転校が決まり、ふたりは離れ離れになってしまう。

それから半年後、明里から貴樹に手紙が届き、それをきっかけにふたりは文通を始める。

しかし、今度は貴樹の種子島への転校が決まってしまう。簡単には会えなくなることを見据え、中学1年の冬、貴樹は明里の住む栃木へ会いに行く約束をする。約束の当日、貴樹は学校の後、明里の待つ岩舟駅を目指すが、雪で電車が遅延し、約束の時間に大幅に遅れてしまう。明里と連絡も取れず、いつ着くともわからない電車に不安を募らせながらも、明里の待つ場所へと向かう貴樹。

岩舟駅に着いたときには、待ち合わせの時間から4時間も遅れてしまっていたが、明里は待ってくれていた。

駅の待合室で明里の用意した弁当を食べながら、ふたりは他愛もない話をして過ごした。そして、明かりもまばらな町を歩き、桜の木の下で、舞い散る雪に思い出の桜景色を重ね、ふたりはキスをする。帰りの電車がなくなってしまった貴樹は、明里と肩を寄せ合い、近くの納屋で夜を明かすのであった。

そして翌朝、岩舟駅のホームでふたりは別れの挨拶を交わした。電車から明里の姿を目に焼き付け、遠ざかっていく貴樹。

やがてふたりは交わることのない、別々の日々を歩み始めるのであった。

第2話「コスモナウト」あらすじ

第2話「コスモナウト」あらすじ

サーフィンに明け暮れる澄田花苗(すみだかなえ)は、同級生の貴樹に恋をしていた。貴樹は中学のときに東京から転校生として種子島やってきていた。花苗の目には、貴樹が他の男子とは異なる雰囲気を纏っているように見えて魅力的だった。高校も彼と同じところに入るため、猛勉強した花苗。

晴れて同じ高校に入学できた花苗は、日々交流を重ね、貴樹と帰り道を共にする仲になっていた。

高校3年になり、周りの進路も決まりつつあるころ、花苗はまだ自分の進む道を決めあぐねていた。得意のサーフィンもスランプに陥る中、花苗は進路について貴樹と話す。自分も迷ってばかりだと言う貴樹に、自分と同じなのだと嬉しくなる花苗。

ひとつずつ、出来ることからやっていこう。そう決心した花苗は、ついにサーフィンのスランプを克服する。波に乗れた今、貴樹に告白しなければ、きっとずっと言えないまま。

自分を鼓舞した花苗は、貴樹との帰り道に告白を試みる。しかし、呼び止めた貴樹の自分を見る目を見て、何も言えなくなってしまう。

その冷めた視線から、貴樹はまったく自分を見てなどいないことを悟る花苗。それでも自分に優しく振舞う貴樹に、花苗は涙する。結局気持ちは伝えられず、貴樹は東京の大学に進学してしまう。

第3話「秒速5センチメートル」あらすじ

「秒速5センチメートル」あらすじ

社会人になり、貴樹は日々仕事に忙殺されていた。そしてある朝、仕事において自分を突き動かしていた気持ちが綺麗さっぱりなくなっていることに気づき、会社を退職する。

また、社会人になってから3年間、水野理紗(みずのりさ)という女性と付き合っていたが、貴樹の心が彼女に向いていないことを悟られ、別れを告げられてしまう。

自室で作業をしていた貴樹は、ふと部屋に舞い落ちた桜に目を留め、外に出かける。そして、小学生のころ明里と通っていた通学路の踏切に差し掛かった際、ひとりの女性とすれ違う。

お互い何かに気づき、相手を振り返ろうとするも、電車が来て視界を阻まれてしまう。

長い長い電車が走り去り、踏切の遮断機が開いたとき、もう彼女の姿は見えなくなっていた。貴樹は少し微笑みながら、また前を向いて歩き出したのだった。

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映画『秒速5センチメートル』感想

美しい世界感の新海ワールド全開の『秒速5センチメートル』について感想を4つご紹介します。

その1:美しい風景描写「新海ワールド」

桜の舞い散る風景はもちろん、冬の寒空の下の駅のホームや、夢に出てくる幻想的な空まで、新海監督の描写力と色使いは圧巻と言わざるを得ません。

現実世界から、さらに美しい映像世界へとワンランク押し上げる彼の技量は、後に続く「言の葉の庭」や、「君の名は。」で更に磨きがかけられています。

これもひとえに新海監督の観察眼と、想像した世界を絵に落とし込む力の成せる技ですよね。

新海監督は少年時代、美しい風景に心を救われながら過ごしていたそうです。それが新海監督が背景美術に情熱を注ぐ所以だと思います。

その2;文学的表現で語られるモノローグ

新海節と言っても過言ではない、文学的表現がちりばめられたモノローグは必見です。

ほかのアニメではあまり表現されないであろう情景や心情を、モノローグで細やかに語ることにより、秒速5センチメートルの世界観を浮かび上がらせ、視聴者を物語の世界へと誘っています。

これが、新海作品が映像文学と呼ばれる所以でしょう。

明里が書いた手紙の文章でさえも、そういった手法が盛り込まれており、新海作品特有のリズムが出来上がっています。この作風は以後の作品にも引き継がれており、新海監督の作品をより情緒的に表現する要となっています。

その3 ドラマへと昇華された日常風景

小さな日常風景からドラマを描き出した本作。

今のご時世なら、約束の時間に遅れるとしても、LINEで「ごめん、雪で遅れる。家に帰ってて。」などと一瞬で送れてしまい、なんのドラマも生まれなかったと思います。

しかしこの年代の、携帯すらも自由に持たせてもらえない中学生だからこそ、連絡が取れずとも一途に相手の元へと向かい、片や待つ、というドラマチックな展開が生まれるのです。

そこに着目して物語を描き出せるのは、新海氏独自の表現力があってこそです。

その4 映像を鮮やかに彩る天門氏の音楽

映画の導入の部分から、ピアノの音色がそっと物語に乗り、視聴者の心に流れ込んできます。

それはドラマを持って「秒速5センチメートル」の世界を作り上げると共に、当てもなく「どこか」へ向かう貴樹の心を映し出す鏡のようでもあります。切なさや、ときに懐かしさとなって、視聴者に過去の思い出を想起させる、トリガー的な役割を果たす曲たちとも言えます。

今は失くしてしまったけれど、いつも探している。そんな、貴樹と重なる心の情景を繊細なメロディに変換して、視聴者に届けてくれるのが天門さんの音楽なのです。

映画『秒速5センチメートル』登場人物・声優

(遠野貴樹/水橋研二)

本作の主人公。1話と3話は彼の視点で語られる。小学校から中学の途中までを東京で過ごす。

幼いころは体が弱く、よく図書室で本を読んで過ごしていた。それがきっかけで明里と仲良くなり、クラスメイトにからかわれたりしていた。しかし、明里は小学校卒業後に栃木へ引っ越すことが決まり、ふたりは離れ離れになってしまう。半年後、明里から手紙が送られてきたことがきっかけで、ふたりは文通を通して交流を再開する。

しかし、今度は貴樹の種子島への転校が決まり、中1の冬に彼女と会って以降、徐々に疎遠になっていく。

2話では花苗の視点で、ミステリアスな人物として描かれている。高校時代は花苗と交流を重ね、優しく接するも、その実彼女のことは全く見ていなかった。大学への進学をきっかけに東京に戻り、就職する。

社会人になり、仕事に忙殺される毎日を送っていた貴樹は、自分を突き動かしていた気持ちがいつの間にか無くなっていることに気づく。その事実に自分の限界を感じた貴樹は、会社を辞める。また同時期に、3年間付き合った女性・水野里紗からは、心が彼女に向いていないことを悟られ、別れを告げられる。

エピローグにて、小学生時代に渡っていた踏切で明里らしき女性とすれ違うが、彼女が立ち止まらずに行ってしまったことにより、ようやく思い出に終止符を打つ。そして、貴樹は微笑みながら未来の道を歩き出す。

(篠原明里/近藤好美 ※第1話、尾上綾華※第3話)

貴樹と両想いだった女性。貴樹と同様、幼い頃は体が弱く、よく図書室で本を読んで過ごしていた。貴樹とは気が合い、自然と仲良くなっていった。しかし、親の転勤で栃木に引っ越すことになり、貴樹と離れ離れになる。

その後、明里の方から手紙を送り、ふたりは文通を始める。中1の冬に、栃木で貴樹との再会を果たし、種子島に引っ越す彼に、あなたはきっと大丈夫だと告げ、送り出した。

3話では、別の男性と結婚した姿が描かれており、貴樹とのことは思い出として懐かしんでいる様子が伺える。

(澄田花苗/花村怜美)

貴樹と同じ高校の、サーフィンに打ち込む女子。中学時代から貴樹に思いを寄せており、彼と同じ高校に入るため、猛勉強して受験に臨んだほどである。

サーフィンでのスランプを克服し、その勢いで貴樹への告白を試みる。

しかし、貴樹が自分を見ていないことを悟り、結局気持ちを伝えられずに終わってしまう。

(水野里紗/水野里紗)

貴樹が社会人になってから3年間付き合った女性。

貴樹の会社の取引先の社員。交流を重ねても一向に縮まらない貴樹との心の距離に悩み、別れを告げる。

映画『秒速5センチメートル』の主題歌について

主題歌は、山崎まさよし氏の「One more time, One more chance」である。

オリジナル版は1997年に発売されたシングルである。「秒速5センチメートル」の公開に合わせて、「One more time, One more chance 『秒速5センチメートル』 Special Edition」として再リリースされた。

新海氏は秒速5センチメートルを制作するにあたり、日々誰もが感じたことのある感覚を、アニメーションの中に描き出すというテーマを掲げていた。彼は、主題歌となる曲をとても重要視しており、誰もが聴いたことがあり、「現代を生きる人々にとって普遍性のある楽曲」を求めていた。

そして数々のヒット曲の中から、この「One more time, One more chance」をメインテーマに据えた、秒速5センチメートルが誕生したのである。

第3話「秒速5センチメートル」の終盤に、登場人物たちの日常を切り取った映像と共にこの楽曲が流れ、本作の世界を見事に完成させている。

映画『秒速5センチメートル』新海誠監督の作品

「ほしのこえ」

「私たちは、たぶん、宇宙と地上にひきさかれる恋人の、最初の世代だ。」

2002年に公開された、新海氏初の劇場公開作品である。地球外知的生命体・タルシアンと戦うタルシアン調査隊に選ばれ、宇宙に旅立った少女・長峰美加子(ながみねみかこ)と、地球に残った少年・寺尾昇(てらおのぼる)の、気の遠くなるような遠距離恋愛が描かれる。

全25分の短編映画で、制作に関わるほとんどの作業を新海氏がひとりで行っている。

ネット上での口コミで話題となり、公開初日の下北沢のミニシアターには行列ができたほどである。

「言の葉の庭」

「“愛”よりも昔、“孤悲”のものがたり」

2013年に公開された、新海氏の5作目の劇場公開作品である。高校生の秋月孝雄(あきづきたかお)は、学校をサボったある雨の朝、ビールを片手に日本庭園を眺める謎めいた女性と出会う。雨の降る朝、孝雄は決まって庭園の東屋でその女性と顔を合わせ、少しずつ交流を深めていく。

新海氏の映像表現のこだわりを随所に感じる作品。風景や雨の描写はもちろんのこと、人物に照り返す光の表現までもがこだわり抜かれている。

また、この作品の主軸となっている万葉集の短歌も、情緒的な含みを持たせる役割を果たし、美しさに磨きをかけている。

「君の名は。」


「まだ会ったことのない君を、探している。」

新海氏を一躍有名にした6作目の劇場公開作品である。ひょんなことから、田舎に住む女子高生・宮水三葉(みやみずみつは)は、東京の男子高校生・立花瀧(たちばなたき)と体が入れ替わってしまう。入れ替わりを繰り返し、お互いの日常生活を過ごしていくふたりは、徐々に互いのことを知っていく。

過去の作風とは異なり、最後は王道のハッピーエンドである。

主題歌はRADWIMPSの「前前前世」で、この曲のスピード感を生かした映画予告が注目を集めた。

新海氏が追求してきた美しい風景描写がこれでもかというくらい画面を彩り、視聴者の目を釘付けにする最強のエンターテイメント作品に仕上がっている。

 

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